経営戦略基礎講座【PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)】

PPMとは、商品或いは事業分野への投資計画に関する経営戦略の一つで、企業の各商品分野(事業分野・商品群)をそれぞれの市場成長率と相対的なマーケットシェアの2つのマトリックスによって分類整理したものである。具体的には、次のような4つの分野に分けてその特徴を踏まえ戦略を明らかにする。

PPMの理論的根拠は大きく2つある。

@ある製品の利益率と資金流入量は、その製品の市場における相対的なマーケットシェアによって決定される。生産コストと累積生産量には負の相関関係が見られ(エクスペリアンス・カーフ効果)同一製品においては累積生産量の多い企業が最も生産コストが低く、収益性も高く、資金流入量も多くなる。故に、マーケットシェアの高い企業は相対的に収益性が高く、かつ資金流入量も多くなる。

Aマーケットシェアの維持に必要な投入資金量は、市場成長率の関数として捉えることができ、成長率が高ければ高いほど資金需要が大きくなる。

 

PPMの4つの象限についてその特徴と戦略的な位置付けを整理すると次の通りとなる。

 

 

特 徴

戦略的位置付け

 

 

問題児

 

資金流入量をかなり上回る多くの資金投資を必要とする。もし、投資を怠れば競合企業に遅れを取ることになる。例え投資を行ったとしても現在の低いシェアを維持する程度の投資にとどまった場合には市場成長率が鈍化した時点で「負け犬」となる

 

「金のなる木」から生み出された資金を投入する事になるが「問題児」の中でもどの商品分野を育てていくかが戦略上の重要な課題となる

 

花形製品

 

資金流入量が多い反面、成長の為の資金需要も大きい。当該マーケットにおいて優秀なシェアを占めている限り、成長率が鈍化した時には「金のなる木」になる

 

 

マーケットシェアの維持が至上命題。

市場成長率が鈍化してきた時「金のなる木」になりうるだけの資金配分が行われなければならない

                                 

 

特 徴

戦略的位置付け

 

 

金のなる木

 

シェアの維持に必要な再投資分をはるかに上回る多大の資金流入をもたらす

 

企業の資金源であり、企業の柱となる商品(事業)分野である。ここでの資金は資金需要の大きい将来性のある商品(事業)分野「問題児」を「花形製品」に育て上げる為に投入するか、あるいは研究開発投資に振り向けることにより、直接「花形製品」を作り出すために投入すべきである

 

 

負け犬

 

資金流入量が少なく、更に景気変動などの外部環境要因によって利益率が大きく左右されやすい

 

多少の資金流入をもたらすが、長期的に将来性もなくシェアを伸ばすことも極めて困難である。従って多額の資金を注ぎ込むことは避けたい。

 

 @新製品(事業)分野は通常「問題児」に位置する

 A「金のなる木」に位置する製品

 (事業)分野で獲得した資金を「問題児」に十分投入すれば「花形」に育て上げることが
  できる。また、投入資金が充分でなければ「負け犬」となってしまう

B「花形製品」はやがてマーケットシェアが成熟すると資金流入の源泉となり「金のなる木」  に変化する。

 C「花形」「負け犬」は、資金の流入流出を差引きするとほとんど+−0と考えられる

 

以上のことから、絶えず「金のなる木」に位置する商品(事業)分野を保有していなければ現時点での高い収益性を確保することはできない。また、将来の収益性を確保する為には、現時点での「金のなる木」は、やがてマーケットの縮小と共に消滅していくので、将来の「金のなる木」に変化しうる「花形製品」を保有しておかなければならない。

 

このように将来の「花形製品」に変化し得る「問題児」も当然保有しなければならない。但し、「問題児」は多く持てば持つほど「金のなる木」から生み出された資金投入が分散されることになるから資金量と考え合わせ「花形製品」に移行し得ると判定される製品(事業)に絞りこむ必要がある。                             潟ーマスブレーン